不思議な「接着剤」

特にマツたちタマキビ(アラレタマキビ含む)で顕著なのだが、「接着剤」と私が勝手に名付けている面白い生態がある。

彼らはゆっくり休みたかったり、外部の環境があまり心地よくないとき、フタをしっかりと閉めてしまう。でも、それだけだと不安定だし海で大きな波が来たら簡単にさらわれてしまうから、岩や、水槽の中であればガラス面などにそのままでぴったりくっつけるように、「接着剤」のような粘液を出して貝殻のフチの周りを固定する。この「接着剤」が感動するほど素晴らしい粘着力なのである。ちょっとやそっと水がかかっても、まったく外れない。

以前、寒さの厳しい時期にマツがずっとフタを閉じたままでガラスにくっついていたので、もしや具合がわるいのかと不安になってちょっかいを出したことがある。貝殻を軽く叩いたくらいではびくともせず、生存確認も取れなかったから、割り箸で貝殻をつまんで引っぺがそうと試みた。ところがそれでも外れない。最後の手段で指でつまんで剥がそうとしたのだが・・・かなりの力を入れても剥がれない。

ウンウンと格闘してようやく剥がれたと思ったら、貝殻のフチとガラス面の間には強力接着剤をチューブから出した時のようなしっかりとした透明な糸と膜のようなものがビヨヨ~ンと現れた。そして貝殻の中からは、「うるさいな~、いったいな~に~???」と言わんばかりに、眠い目をこすりながら(?)不機嫌そうなマツが顔を出した。もちろんヌシがマツに平謝りしたことは、言うまでもない。

今でもときどき、あまりにも長い間フタを閉じて張り付いている貝がいるときにはこの方法を取って生存確認をすることがあるが、いつも剥がした後には透明な接着剤を少し厚みをつけて盛ったようなゼリー状のものがしばらく残る。それはいつの間にか消えてしまうのだが、水で流しても簡単には取れるものではないし、どういうタイミングで消えるのかはまだ分からないままである。こうした生態に気づく前、マツのすぐそばのガラスにヒビが入ったように見える部分があって気になっていたのだが、どうやらこの「接着剤」の痕跡だったらしい。貝殻のギザギザに合わせた形になるから、ヒビのように見えるのである。

この「接着剤」、成分を調べたらとても優秀な本物の接着剤が作れそうなのだが、どこかのメーカーが挑戦してくれないものだろうか? 水にも強いし、安全性も高いし、素晴らしい成分だと思うのだが。

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