「カツーン」という音――「サルも木から落ちる」ならぬ「貝も岩から落ちる」

「カツーン」という音がするたび、水槽の中を覗いて「点呼」を取るクセがついてしまった。

ご存知の通り巻貝たちは基本姿勢として、岩やガラスに張り付いているものだ。しかし、「サルも木から落ちる」ではないが「貝も岩から落ちる」ことがある。爆睡してしまったり、何かの拍子にうっかり、といった感じで転げ落ちるのである。もちろん、ごく稀に病気などで弱っていて落ちることもある。そのときの音が「カツーン」である。貝殻が下に落ちる際に岩に当たる音で、場合によっては「カツーン、コロコロ」といった音になることもある。

海の中であれば水の大きな動きがあるから、ちょっと転げ落ちたくらいでは彼らは何ともない。すぐにその水の動きをうまく利用して体勢を立て直し、またどこかの岩にしっかりとつかまることができる。ところが、人工の環境、しかもほとんど止水に近い環境下では、落ちた場所が悪いと他の仲間が通りがかりでもしない限り、どこにもつかまれずにもがき続けてしまうことがある。そして体力を失って、運が悪いとそのまま力尽きてしまう。だから、「カツーン」という音がしたら、できるだけ早めに必ず水槽の中を覗くようにしている。たいていの場合はつかまる場所があるし、私もできるだけ手は貸さないで貝が自分の力で元に戻れるようにしている。しかし、落ちた場所が明らかにまずくてこのまま起き上がれないと判断した場合には、岩組みをどけて「レスキュー」しなければならない。

何時間か前「カツーン」という音がしたので後で水槽をチェックしないとと思いつつ、電話などへの対応でチェックできないでいた。寝る前に覗いてみると、アラレタマキビのうちの1匹、シロちゃんの姿が見えない。小さな体だから、岩の裏側などに張り付いていると分からないこともあるので丁寧にチェックしたが、いない。すると、底砂のサンゴ砂(少し粗目なので小さな石といってもよい)の上にひっくり返っているのに気づいた。シロちゃんはその名の通り、全体がかなり白い色をしている。そして、サンゴ砂も白い。だから、なかなか気づかなかったのだ。身を全部出しているところを見ると、だいぶもがいていた様子。他の貝の背中に乗せてもらって甘えるのが上手なシロちゃんだが、その最中にどこかにぶつかって転げ落ちてしまったのではないだろうか。これはすぐにレスキューしないと、小さな子だから力尽きてしまう。

大慌てでマツたちを水槽の外に出し、岩組みを外して助け出した。しかし、だいぶ弱ってしまっていた。シロちゃんはもともと活発な子だけに、とても心配である。今、岩の上の餌場の上で休ませている。何とか動こうと少しずつ頑張っている様子だし、私からの呼びかけにも応じていたから、このまま元気になってくれるのを祈るしかない。不安要素としては、マツたち体の大きな他の貝がうっかりそばを通ってシロちゃんを引っ掛けてしまい、またボトルの底まで落としてしまうことが挙げられる。別の小さな容器に移してやったほうがいいのかもしれないが、それはそれでまたストレスになると思うので、できればこのまま様子を見たい。

何とか明日の朝までゆっくり休んで、また元気になってくれるといいのだが・・・

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