タマキビのエサ

イシダタミのエサ、スガイのエサについてそれぞれ書いたので、残るマツたちタマキビのエサについても、現時点で分かっていることを記録しておきたい。

イシダタミ、スガイ、タマキビのほかに、今までオオコシダカガンガラ、コシダカガンガラ、クボガイなども飼育してきたが、最も飼いやすいと感じたのはタマキビである。なぜなら、彼らはあまり食べ物を選り好みしない。与えられたもので「取りあえず食える」なら、何でも食べてしまう生命力の強さがある。おまけによく観察していると、他の貝たちよりも人に懐きやすく、頭もなかなかよい。現代生活に適応しやすい柔軟性も備えている。

タマキビたちは貝のくせに水が嫌いで、岩の上にあがっている時間のほうが圧倒的に長い。これは進化論的に言うと、海から陸に移動していく途中にあるということで、そういう意味では他の貝たちよりも進化していると考えられる。頭がいいのもそのせいなのだろうか? 特にマツの逞しさは目を見張るほどで、私はヤツの生命力、行動力に私も随分励まされて毎日を送っていると言っても過言ではない。今までマツが食べたものを、実際に私の目で確認した限りにおいて以下に記すが、実際にはヤツのことだから他にもいろいろ食べているに違いない。

1.おむすび用の黒海苔
2.干しわかめを戻したもの
3.干しひじきを戻したもの
4.能登の海岸で拾ってきたぎんばさ(=ホンダワラ)の丸い実の部分

おむすび用の黒海苔は、以前にも書いた通り、私がまだ飼育方法がよく分からずにいたときに非常食の意味合いで与えたものであり、すべてのタマキビが食べるとはちょっと保証できない。マツだけが、生きるために妥協して食べてくれたというだけだ。それにしてもヤツはかなりのチャレンジャーである。思わず敬意を表してしまう。

干しわかめと干しひじきは、タマキビたちはほぼ全員が喜んで口にする。特に干しひじきはとても喜ぶ。マツはちょっと太めのひじきを好む。しかし、私が使っているのは「姫ひじき」という細い製品なので、できるだけ太いものを選んで与えている。上手にお腹で抱きかかえて食べている姿は、人間の姿にそっくりで微笑ましい。戻しが足りなくて硬いと、マツの機嫌が悪くなる。以前、マツがお腹が空いている様子だったので、まだ戻し途中の干しひじきを目の前においたところ、見た目で喜んでかぶりついたが、すぐに「かた~い・・・」と言わんばかりに上目遣いで私を睨み、放置。やはりできるだけ柔らかくして与えるのが大事である。

それでは毎日干しひじきをやればいいかというと、飽きてしまうのか突然手を付けなくなる。そんなときには干しわかめをやると、とても喜んで食べ始める。両方同時に入れておいてやれば、その日の気分(?)によってバイキング状態で好きなものを選んで食べているようである。まあ、人間だってそうだが、毎日同じものばかり食べさせられたらたしかに嫌になるから、そんな感じで食べ分けているのかもしれない。かと思えば、与えたエサには一切手を付けず、ひたすら岩の藻をカリカリと音を立てながらかじっている日もある。朝のあいさつついでにマツに語りかけながらその表情をじっと見ていると、今日はワカメの日かヒジキの日か分かることも多い。水で戻すのに時間がかかるから、用意がなくて違うほうを入れてやると、それまで私のほうを向いて犬が尻尾を振るかのようにツノを元気に動かしていたのが、途端に機嫌が悪くなってクルクルッと向きを変えて私にお尻を向けるから、思わず苦笑いしてしまう。

ぎんばさは、能登でよく食べられている海藻類の一つ。正式名称はホンダワラという。古代人は、このホンダワラに何度も海水をかけることで塩作りを行っていた。万葉集にもたしか塩作りのことを詠んだ歌があり、そこにこのホンダワラが登場する。たしか、「藻塩」という表現だったと思う。このぎんばさ、以前、マツの水槽に入れてやったときは、あんまり食べている風ではなかったので嫌いなのかと思っていた。しかし今回、奥能登の海岸で拾ってきて入れてやったところ、数日たって少し傷んできたかな?というくらいのときに、丸い身の部分をガジガジとしているマツの姿を発見した。海藻は朽ちてくると海水に溶けてドロドロになり始めるが、ぎんばさはそう簡単にはドロドロにならない。水替えの度に軽くすすいでまた入れておくことを繰り返すと、岩についた藻が育つのか、イシダタミたちがとても元気になるという副次的効果もある。

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