「人間用じゃありません!」

昨春、東京に戻ってから初めて能登に出かけた時のこと。

能登に住んでいる時に行きつけだったスーパーで、さまざまな生の海藻をマツ用に物色していた。

知らない海藻や、生なのか茹でてある(能登の人は「湯がいてある」と言う)のか分からない海藻があったので、鮮魚コーナーの顔なじみのスタッフに声をかけた。

事情を説明して、よりよい海藻を教えてもらおうと思って、おずおずと

「実は人間用じゃないんですけど・・・」

と言いかけると、まさかエサ用だとは思っていないその人は、たちの悪いジョークだと思ったのか、何を言っているのだという顔をしながら、

「いやいや、人間用ですっ!!!!!」

と断言。困った私はすかさず、

「いえ、人間用じゃないんですっ!!!!! 『貝用』なんですっ!!!!!」

と断言。

「・・・???」

何度か同じやり取りを繰り返し、ようやく私が真面目に言っていることが伝わったのか、唖然とするスタッフの人。(当たり前)

「実は能登のシタダミを飼ってまして、エサ用なんですよ~」

とようやく説明できた。

スタッフの人はビックリしながらも、巻貝たちの好きそうな海藻を教えてくれたが、それ以来、私はすっかり「シタダミを東京で飼っている変な人」として覚えられてしまったようである。

能登の人たちにとって磯の巻貝たちは、あまりにも見慣れた「風景」であって「生き物」としてあまり認識されていない。というか、ほとんど相手にされていない。

マツたち、かわいいのになあ・・・

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