「シタダミ」のシンプルな食べ方
貝類に関して「ベジタリアン化」しつつあると述べておいて大変矛盾しているが、マツたち「シタダミ」の大きな魅力の一つである「食べ方」について書いてみよう。だいたいが、「シタダミ」とか「磯の巻貝」などと入れて検索すれば、まずリストアップされるのはこんな飼育ブログではなく、「おいしい食べ方」というのが悲しいかな(?)現実だ。 私にこの食べ方を教えてくれた奥能登の揚げ浜塩田の親方は、私がマツたちを飼い始めたことにびっくりして、「(マツたちを見ていても)俺にはうまそうとしか思えんけどなあ」とまで言われたほどである。そのくらい間違いなくうまいし、能登の年配の方たちは酒のつまみによく食べる。 その親方から教えてもらった一番簡単でおいしい食べ方は、塩水で茹でて、熱いうちに待ち針で身を突付くという実にシンプルな方法である。身が小さいから、針がないと中身を出すことはできない。この点はかなり面倒だが、苦労しても食べたくなるほどうまい。まさに、「やめられないとまらない」のである。 さて、この塩水であるが、まったく今考えれば恥ずかしい話だが、生まれも育ちも東京のど真ん中という私は、親方から「塩水で茹でて食べるんだ」と教えてもらって、最初の頃はいちいち水道水に塩を混ぜて茹でていた。 ある時、「ほんなら海水を汲んでいって、それで茹でればいいんじゃないが?」と指摘され、「あ・・・」と愚かな都会モンの私は気づいたのである。それ以来、シタダミを採取したときには、必ずペットボトルに1L程度海水を汲んで持って帰るようになった。 そのうち、最初から手鍋を持参し、その中に採集したシタダミたちを入れて、海水とともに家に持って帰るなんていう手抜きワザまで身につけてしまった。ただし、ストレスなのか、車に乗せて持って帰る途中で大量のフンをするので、鍋に入れた海水をそのまま煮るのに使うのはお勧めできない。別途ペットボトルに海水を汲むのは、そのためである。 マツもそうやって私に「拉致」されてきた。 マツ、本当にごめん・・・ だが「シタダミ」たちが、その小さな体にもかかわらず、奥能登の生態系に立派に貢献して「里海」を構成し、時には人間の食料となり、果ては人間の心を癒やす家族の一員とまでなってくれているというのは、考えてみるととても偉大なことだと言えないだろうか?